私たちは何かを決めるとき、「論理的に考えよう」「根拠を集めよう」と自分に言い聞かせる。しかし本当に重要な場面ほど、最後に背中を押すのは直感ではないだろうか。岩立康男著『直感脳』は、その感覚に明確な言葉と理論を与えてくれる一冊だ。
直感は感覚ではなく「脳の機能」
本書で印象的なのは、直感をスピリチュアルなものや曖昧な勘として扱わない点である。著者は、直感を「経験と知識が高速で統合された脳のアウトプット」と捉える。つまり直感とは、考えていないようで、実は膨大な情報処理の結果なのだ。
論理的思考は一つひとつ順を追って検証する。一方、直感は同時並行で処理し、瞬時に結論を出す。複雑で不確実性の高い現実世界では、後者のほうが有効に働く場面が多い——それが本書の一貫した主張である。
論理は「説明」、直感は「判断」
岩立氏は、論理と直感を対立させるのではなく、役割の違いとして整理する。論理は他者に説明するため、直感は自分が決断するためにある。私たちはしばしば、説明できない判断を不安に感じるが、実際には正しい判断ほど後から理由がついてくることも多い。
この視点は、研究、ビジネス、創作など、正解のない分野に関わる人ほど腑に落ちるだろう。ひらめきは論理の延長線上には現れにくい。むしろ一度論理を手放した瞬間に、全体像が見えることがある。
直感脳は鍛えられる
本書の希望的な点は、直感が生まれつきの才能ではなく、訓練可能な能力だと示しているところだ。経験を積み、フィードバックを受け、自分の判断を振り返る。その繰り返しによって、脳はより精度の高い直感を生み出すようになる。
重要なのは、「考えすぎない勇気」と「直感を検証する姿勢」を両立させることだ。直感を信じ、結果を観察し、必要なら修正する。この循環こそが直感脳を育てる。
高3の進路選択と『直感脳』
思い返せば、高校3年生で進路を決めるとき、私はとにかく悩んでばかりいた。周囲の意見、偏差値、将来の安定性、論理的に「正しそう」な選択肢を並べては、どれも決め手に欠け、前に進めなくなっていた記憶がある。
あのとき感じていた小さな違和感や、「本当はこっちに惹かれている」という感覚を、私は直感として信じきれなかった。理由を明確に説明できない選択は危険だと思い込み、考えるほどに自分の感覚から遠ざかっていったのだ。
もし当時この『直感脳』に出会っていたら、結果は同じだったとしても、もっと納得感のある決断ができていたのではないかと思う。直感は未熟だから排除すべきものではなく、経験の入り口として大切に扱うべきものだと知っていれば、あれほど自分を責めずに済んだかもしれない。
まとめ:AI時代に直感を取り戻す
AIに相談すれば、選択肢の整理や論理的な比較は簡単にできるようになった。だからこそ今、人間に残された役割は「正解を計算すること」ではなく、どれを選びたいかを決めることなのかもしれない。
『直感脳』は、論理を否定する本ではない。論理が力を発揮する場面と、直感が決定打になる瞬間を切り分け、「最後の判断は自分の感覚に委ねていい」と教えてくれる本である。
高3の頃、悩み続けて動けなかった自分に、今ならこう言える気がする。考えることをやめなくていい。ただ、感じることまで止めなくていい、と。
論理はAIに任せてもいい。だが、人生の選択に責任を持つのは、いつだって自分自身の直感なのだ。

「悩んだら直感を信じてみようかにゃ〜」

