自然的短音階・和声的短音階・旋律的短音階をわかりやすく解説
ジャズの世界では、『スケール(音階)』の理解が即興演奏やアドリブに欠かせません。
その中でも「短音階(マイナースケール / Minor Scale)」は、ブルージーで深みのある響きを作るうえで非常に重要です。
この記事では、ジャズでよく使われる3種類の短音階――
自然的短音階(Natural Minor)、和声的短音階(Harmonic Minor)、旋律的短音階(Melodic Minor)――を丁寧に解説します。
🎵 自然的短音階(Natural Minor Scale)
自然的短音階は、もっとも基本的なマイナースケールです。
メジャースケールの6番目の音から始まるスケールとも言われます。
(→こちらについては、別のブログで解説します/Coming soon)
例:Aナチュラルマイナー(A Natural Minor)
A – B – C – D – E – F – G – A
このスケールは、明るすぎず、暗すぎない自然な響きが特徴です。
クラシックやポップスでも頻繁に登場します。
ジャズでも、『マイナーコード(Am7など)』に使うことで、落ち着いた印象を与えます。
🎶 2. 和声的短音階(Harmonic Minor Scale)
和声的短音階は、自然的短音階の7番目の音を半音上げたスケールです。
例:Aハーモニックマイナー(A Harmonic Minor)
A – B – C – D – E – F – G# – A
このG#によって、独特のエキゾチックで緊張感のある響きが生まれます。
特に、『Am7(トニック)→E7(ドミナント)』という進行で力強い引き締まりを感じられます。
ジャズでは、V7(ドミナントセブンス)コード上で使うスケールとして頻繁に登場します。
たとえば、Am7に続くE7では、Aハーモニックマイナー由来のスケールを使うことでスムーズな解決感を得られます。
🎼 旋律的短音階(Melodic Minor Scale)
旋律的短音階は、クラシックとジャズで少し解釈が異なります。
クラシックでは:
- 上行時(登るとき):6番目と7番目を半音上げる
- 下行時(下るとき):自然的短音階に戻る
ジャズでは:
上り下りともに6番目と7番目を半音上げた形で使います。
例:Aメロディックマイナー(A Melodic Minor)
A – B – C – D – E – F# – G# – A
このスケールは、洗練されたモダンジャズの響きを生み出します。
特に、次のようなコードに対応します:
- Am(maj7)(マイナーメジャーセブンス)
- A7alt(オルタードドミナント)
- Dm7(9) など
上品で滑らかな流れを作るため、ビル・エヴァンス(Bill Evans)やハービー・ハンコック(Herbie Hancock)など、多くのピアニストが愛用しています。
💡 まとめ:3つの短音階をどう使い分けるか?
スケール | 構成音の特徴 | 音の印象 | ジャズでの主な使い方 |
---|---|---|---|
自然的短音階 | そのまま(7番目なし) | 素朴で落ち着く | シンプルなマイナー曲、Am7など |
和声的短音階 | 7番目を半音上げる | 緊張感・異国風 | ドミナント(V7)に向かうとき |
旋律的短音階 | 6・7番目を半音上げる | 滑らか・モダン | ジャズソロ、Am(maj7)、A7altなど |
🎹 ジャズ練習のヒント
- 1つのキーで3つの短音階を弾き比べてみる
→ 音のキャラクターの違いを体で覚える。 - コード進行(Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ)で実際に使ってみる
→ 「どのスケールがどんな響きを作るか」を体感。 - ビル・エヴァンスやコルトレーンのソロ分析をする
→ メロディックマイナーの使い方の参考に最適。
✨ まとめ
短音階は、ジャズの「深み」を作る鍵です。
自然的短音階で「基礎の響き」を学び、和声的短音階で「緊張感」、旋律的短音階で「モダンな流れ」を身につけましょう。

音を楽しもうにゃ
出典・参考文献
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黒本シリーズ『ジャズ・スタンダード・バイブル』(リットーミュージック)
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マーク・レヴィン著『ザ・ジャズ・セオリー』(The Jazz Theory Book, Sher Music Co.)
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ウィリアム・ルソー著『ジャズ作曲技法』(音楽之友社)
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バークリー音楽大学オンライン教材「Berklee Online: Music Theory 101」
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Yamaha Music Foundation「音階の基礎と種類」解説ページ
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Wikipedia日本語版「短音階」「旋律的短音階」「和声的短音階」各項目(最終閲覧日:2025年10月)